さよならチビちゃん

この夏は裏庭に設置したフィーダーにやってきたハミングバードを間近に観察できて、楽しい時間を過ごすことができた。アメリカに27年も生活していながら、この「いとおかしき」小さな友に、つい最近まで気がつかなかったなんて、自分はなんと勿体無い時を過ごしてしまったのかと後悔したくらいだ。たぶんそれまで何回も彼らを見かけたに違いないのだが、まったくハチか何かの虫が飛んでいるようにしか見えず(だからハチドリというのだが)僕は見事に騙され続けていたのである。だから、ウチのバックヤードに彼らがやってくる確証を得たあと、早速ハチドリ用フィーダーを設置することにしたのである。今年の5月のことだ。

フィーダーは僕の Den の窓からよく見える位置に設置した。裏庭には今年は娘たちが野菜畑を作っていた。なんでも、グロッサリーストアでもらってきた野菜栽培キットが運よく芽を出したので、裏庭に畑を作ることにしたのである。
頻繁に人が出入りするようになると、ハチドリたちも寄り付かなくなってしまうのではないかと、最初は心配したのだけれど、それには及ばなかった。どうやら彼らはいつも腹ペコらしい。人がいようがいまいが、甘いネクターのありかを知れば一目散にやってくる。
僕がフィーダーを設置して間も無く、彼らは毎日のようにやって来るようになった。夏が近づいて暑さが増すにつれて、フィーダーにとどまる時間も長くなった。栄養も水分もより必要になるからだろう。おかげで僕は彼らの姿をたっぷりと堪能することができたのである。

それにしても彼らの飛翔力はすごい。空中でホバリングできる鳥は他にはいない。あの羽根は一秒間に100回以上も羽ばたいているという。つまり彼らを撮影しようと思ったら、最低 1/125くらいのシャッタースピードが必要ということだ。僕の手持ちのカメラでは少々心もとなかったが、何度か撮影にも挑戦した。

先月、トロピカルストームに見舞われあと、8日間も停電が続いた時でも、この「チビちゃん」たちはどこ吹く風とやってきて(確かにすごい風と雨の中でもやってきた)僕を慰めてくれた。電気が止まると手も足も出ないような生活をしていたことに気づかされて、常に自然のリズムとシンクロして生きる彼らに、生きる姿勢を学んだような気がした。

その愛しき「チビちゃん」たちは、確かに一昨日までは姿を見せていたはずなのに、今日ははたりと姿を見ない。どうやらもう南国に向かって旅立ってしまったようだった。二日前にトマト畑のサポートに刺してあった木の枝で、しばらく留まっている姿を見たのだがー。「留まっている姿なんて夏の間にはついぞ見なかったなあ」と思いながら、僕は眺めていたのだけれど、今思うと、その時、彼はあたかも天候を伺い、風向きを確認して、旅立つ時を待っているかのようだった。あるいは、僕に別れを告げていたのかも知れないな。

なぜかアメリカ大陸だけに生息しているというハミングバード。聞くところによれば、夏の間にはアラスカでも姿が見られるという。僕が住んでいるこのエリアでは、ちょうど Labor Day あたりを境に、どこかに移動してしまうようだ。まるでプレイランドのオープン期間( Memorial Day から Labor Day まで)に合わせているかのようである。

裏庭のフィーダーはもうしばらくかけておくことにしよう。渡り遅れた lazy くんが旅の道中立ち寄るかもしれないから。

撮影した「チビちゃん」の映像を、後日、編集してみました!


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